最近の世相を反映する流行語(2)

前号に引き続き中国の流行語をお届けします。流行語となるには、多くの人が潜在心理として感じていたことが、文字として顕在化され共感した時に流行語となります。流行語を読み解くと大衆の深層心理が読み解けます。

社死「社会的死」(2023年)

202077日、杭州市に住む趁呉さん(24)は、届いた宅配を受け取りに出向いたマンション階下で、宅配の少年から荷物を受け取る様子を隣の便利店の店主 藍斌(27)に、こっそり動画撮影されました。店主 藍斌と友人の賀元(24)が、「宅配の少年とパトロン女」と題した文章を捏造し、盗撮した動画とともにグループチャットへ投稿しました。藍斌グループチャット内で冗談であると言っていましたが、他グループへ転送され瞬く間に広まりました。その結果、ネット上では趁呉さんを「浮気性の女」「少年を誘惑した女」「有閑マダム」などの誹謗中傷が殺到、自分の周りの家主、上司、同僚、友人たちにまで、色々取り沙汰されました。

趁呉さんはうつ病を患い会社を辞めざるを得ず、暫くは人との接触を断ちました。4ヶ月以上経っても、時々ヒステリーを起こすなど情緒不安定となり、感情のコントロールができません。杭州公安当局は、二人を逮捕し勾留しましたが、僅か9日間の拘留で釈放しています。しかし被害者の趁呉さんは仕事を探すのも難しくなり、12万元の賠償を求めています。

社死とはネット上で個人のプライベートや過去の恥ずかしい行動、不名誉な出来事を無理やり公開し、社会的な評判や信用をお貶め、まともな生活が送れなくする状況を言います。深い羞恥心や他人の前で面目を失うほどの屈辱を感じることから、社会的死とも呼ばれます。日本でもSNS上での誹謗中傷が日本でも社会問題化しています。今回の事案は悪意のあるものですが、中国ではこの種の犯罪の損害賠償の算定は難航しているようです。

社交牛B「人付き合いが得意な人」(2021年)

この流行語を分解すると社交は「ソーシャル」を意味します。B牛逼の置き換え文字で「すごい」という意味です。Bに置き換えて上品なことばの表現に改めています。は「症状」を意味し、直訳すれば「人との交際が非常にすごい症状」となります。この流行語は、他人の目を気にせず、嘲笑されたりすることを恐れず、見知らぬ人や親しくない人と会話できる人を指します。 こうした人々は外向的で社交的、適切な距離感を心得ており、人に圧迫感や不快感を与えることはなく、EQ(心の知能指数)が高い人たちと言えます。人と接するときに心理的なプレッシャーがなく、自由に行動し、人前で恥ずかしい思いや不快に感じたりすることなく積極的な行動をとることができます。自信があり、他人の目や嘲笑されることを恐れず、簡単にコミュニケーションをとることができる人を指します。

なぜ流行語となったのか社会的背景を探ってみましょう。社交牛Bが流行する前には、社交恐惧症という言葉が流行っていました。調査によると80%の大学生が、自分はコミュニケーション障害だと自覚しているそうです。でも人とのコミュニケーション力向上には意欲を持っています。Tiktok社交牛Bの関連動画の再生回数は、20億回を超えていることからも、この種の悩みに関心を持っている中国人が多いのは意外です。多分このような共通した悩み的背景から誕生した流行語でしょう。

眼包「煌めく人」(2023年)

直訳すれば「人目を引くバッグ」の意味です。バッグの外見やセンスだけでなく、他の人とは違う個性や表現の多様性を表すことができれば、注目を引きつけられます。人々に対しても同様で、その人の内面的なバイタリティーを表すことに本当の意義があります。

 

もともと眼包「目立ちたがり屋」として、人を貶す意味合いで使われていました。現在は、ほめる意味で使われることが多くなり、貶す意味合いは次第に失われつつあります。ある人を顕眼包と表現した場合、外面的に「目立ちたがり屋」だけでなく、それ以上にその内面から活力が溢れて煌めいていることを表します。

最近の世相を反映する流行語(1)

去る2月の特別授業で中国の流行語が取り上げられました。中国の知人から提供を受けた最近の流行語を紹介します。流行語が広まるに至った社会的情勢や人々の心理について、解説したいと思います。

普信男「自信過剰の勘違い男」2022年)

湖南卫视电视(テレビ局)脱口秀大会(トークショー大会)という10回に亘って放映されたバラエティ番組があります。日本のテレビの「綾小路きみまろ」爆笑漫談のような番組です。出場選手が一人で舞台に立ち、多くの人が共感できるネタを漫談形式で笑いに変えて、対戦形式で順位を競うものです。出演者の一人(河北省秦皇岛,31)という女性が、第4回目の対戦で什么看起来那么普通。但是他却可以那么自信。「あの男は明らかに見た目が普通なのに、なぜあんなに自信があるの?」と語り、みんなが共感できるネタで大受けしました。はその後芸能人になりました。このトークネタの「通なのに自過剰の勘違い」から、頭文字を拾って普信男という流行語が大ヒットしました。以後、中国では男性をからかう表現として定着しています。

1979年から、中央政府は生育政策「一人っ子政策」を実施しました。その結果、一人っ子は周りから甘やかされて育ったため、わがままに成りがちで小皇帝と呼ばれています。中には自分を過大評価し、他人の気持ちを無視、コミュニケーションが取れないなど、異性の評価が芳しくない人が見受けられます。特に近年、未婚男性が増加している状況においては、自分のことを棚に上げ、相手に良い条件を求めるので、結婚相手を見付けられません。そのような社会的背景から普信男の流行語が生まれました。普信男は軽蔑的な言葉ですが、その今風の言い方は瞬く間に流行し、自信過剰で傲慢な男性を指す意味で使われています。

 

你是我的神「あなたは私の神です」(2023年)

同テレビ局4億人が視聴すると言われるお化け番組があります。それは公開オーデション番組の快乐男声です。かつての日本の「スター誕生」に似た番組です。この流行語はその番組で生まれました。2013年の最終選考会に二人の男性 欧豪宁桓宇が残りました。審査員でスター女優の海青(江苏省南京市,45歳)は、拒否権を持つ特別審査員、評価コメント前に海清欧豪に対し、ロングヘアーとショートヘアーのどちらが好きですかと尋ねました。欧豪がショートヘアと答えると海青这辈子我的短发为你而留この人生で、私のショートヘアはあなたのためのものです」と言い、ここから有名なシーンが始まります。

海青は審査員席を離れてステージに駆け上がると、直接 欧豪に駆け寄り、彼女は胸に手を当て片膝をつき、你是我的神と声高に叫びました。大歓声が起こり、海青は立ち上がり、そして他の審査員に向かって凛として拳を上げ、欧豪をお願いしますと請願しました。この突然の行動に欧豪はおびえ後ずさり、他の司会者、アシスタントもあっけにとられリアクションできず固まりました。この你是我的神と言う表現が、インターネット上で人気を博し、流行語として広まりました

この表現は、通常、誰かに対する極度の称賛や尊敬を表すときや茶化す時にも使われるようになります。例えば、友達が自分の分からない問題を解いた場合、你是我的神 と言って相手を褒めることができます。さらに、誰かの行動が恥ずかしかったり、滑稽だったりすることをからかったり、皮肉ったりする場合にも使われます。例えば、友達が道を歩いていて突然電柱にぶつかったとき、哈哈哈哈哈,你是我的神 と言ってからかうことができます。友人が並外れた才能を示したり、予想外の面白いことをしたときなどにも、ユーモラスまたはからかいの方法で用います。

中国にも芸能界のスターを追い掛ける文化があり、最初の頃はファンがアイドルへの支持や愛情を表現するために、使われたことからスタートしています。ビデオを見ると海青自信を持って堂々とした振る舞いには、たいへん感服します。

 

「お間抜けさん」(2022年)

喜劇映画 西虹市首富「西虹市の大富豪」は数本制作されています。その中で主人公のサッカー選手 沈騰は、亡くなった親戚のお爺さんの遺産相続するためには、1カ月に10億元を使い切ることが条件として提示されます。お金を使う案を次から次へと考え、その一つとして投資に失敗して減らそうともしますが、逆に大成功して増やしてしまうなど、頭が良いのか馬鹿なのか分からないところからきています。直訳では聡明な人ですが、現在では少しぼんやりした人や可愛いお馬鹿さんを表します。中国ではは貶す時に使い、は「ずる賢い」という意味になります。その反対にが付くと褒め言葉になります。

 

いずれもネットで動画が無料配信されています。早口でなかなか聞き取り辛いですが、言葉の背後にある文化的背景を知ることができます。

中級編/離合詞~誕生の由来と役割

去る210日の特別授業で「離合詞」の解説がありました。中国語学習者にとって、離合詞は難解であり、その由来と役割について、今回説明したいと思います。用法については、詳しく解説されている参考書を参照下さい。ここでは割愛します。

離合詞の由来

古代中国では、漢字一文字で意味を伝えていました。しかし新しい事象が増え、一文字ではニーズを満たせなくなり、辞書を引けば気付くように、一文字に多様な意味を持たせた結果、一文字の用法が複雑になり過ぎました。そのため二文字の連語にして、多様な言い方に対応しました。さらに会話でもっと複雑な意味を、短い言葉で効率的に伝えたいと離合詞が誕生しています。

離合詞の定義

離合詞はその名が示す通り「引き離される合体した語句」を意味します。二文字(連語)の間に修飾成分を加えて引き離し、意味を拡張できる用法で、3400種あると言われています。

例えば(会う)を拡張すると、一次(一度会ったことがある)见过(会ったことがない)(ちょっと会う)跟他(彼と会う)などと短い語句で意味を拡張できます。

※用例の下線の文字は、修飾する成分や目的語を示す。

離合詞の分類

何万語もある連語から、離合詞と判断するルールは、残念ながら確立されていません。因みに中日辞書では、ピンイン表記に“//(ダブルスラッシュ)で記して離合詞を区分しています。

結果論で言えば、結合した単語を切り離すことができれば、離合詞の可能性が高いです。実は中国の人たちも、離合詞と言う概念を持たぬまま普段会話しています。中国の言語研究(中国194095)によれば、離合詞は以下の特徴があると述べ、動詞の後に続く品詞の4形態に分けています。

・形態【1】名詞 ⇒  见面生气起床毕业理发操心做梦点头

・形態【2】動/形  ⇒  打工留学游泳睡觉洗澡散步 帮忙着凉

・形態【3】補語a  听懂达到提高打断听见  

・形態【4】補語b  回来下去分开打开起来

形態【1】動詞に名詞が続くタイプ〈動詞+名詞型〉

動詞に名詞が続くこのタイプは、離合詞として最も多いです。二番目の文字が単独、または他の語と結びつけて使えるかが判断基準になり、名詞は単独でも使えるので離合詞になります。

例えば 见面(会う)は、名詞の()は単独でも意味が通じ離合詞になります。この形態の離合詞は、以下の用例に示すように、間に数量詞や所有格代名詞を間に置くことができます。

〔用例〕一次面、 生我的气、结两次婚、打了半天工、洗了两次澡、留过三年

ところで比較例として 见解(見方)を挙げれば、動詞 の(わかる)が単独では意味を成さず、離合詞となりません。

形態【2】動詞に動詞/形容詞が続くタイプ〈動詞+動/形容詞型〉

二文字の間に数量詞や量詞が置ける連語は、離合詞になります。以下に用例を示します。

〔用例〕了半天工、洗了两次澡、留过三年两次婚、帮我的(手伝って)

反対に次に挙げる語句は、間に数量詞などが置けないので、離合詞ではありません。

離合詞でない連語工作失去生产出发下次可能自觉

形態【3】動詞に結果/可能補語が続くタイプ〈動詞+可能/結果補語/助詞〉

二文字の間に可能補語の/不、動態助詞の//を置けるタイプは離合詞となります。日本の参考書では、平易な取り回しにするため、離合詞を形態【1】と【2】に限定し、【3】は目的語が置けないと記述されている本も見られます。中国では、この形態【3】も離合詞に含めて、目的語が置けるとしています。目的語を置いた用例を示します。

〔用例〕了目标(目標に達した)声量(声をひそめる)

(聞いて分からない)了七个小时

形態【4動詞に方向補語が続くタイプ〈動詞+方向補語〉

方向補語の/がある語句も離合詞と認められます。後ろに目的語が置けます。

〔用例〕箱子(箱を開けれない)(起き上がれない) ,

(降りていった)

結言

中国語の文法は、英語のような厳格なものでありません。英語のような明瞭な文法体系でないですが、慣用文型として成立するように文字の組み合わせ方に留意ください。 

中級編/発音の学び方~左脳とひらめきが重要

中国語リスニングを何百回,何千回とやっても、リスニング能力が全然向上しないと嘆く人が多いのではないでしょうか。店頭に参考書が並んでいますが、基礎的なリスニング学習法しか書かれていません。決定的なリスニングの秘訣や奥儀を説いた参考書は見当たりません。そこで医学博士の養老孟司先生による「脳における言語処理の研究」が、リスニング力向上の手がかりになります。

右脳と左脳の違い

脳の右脳は「図形処理・幾何学」を処理し、左脳は「話す・聞く」を処理しています。中国語の漢字は右脳で認識し、日本語「かたかな」の発音は左脳で認識します。リスニングの語句が聞き取れない時、漢字を見ると咄嗟に「な~んだ!知ってた字だ!」と気付くことが多々あります。

つまり左脳の聴覚で聞き取りが難しいですが、右脳の視覚では瞬時にイメージが湧きます。欧米人の場合は逆で、漢字は日本人がアラビア文字を見るような感覚、見てもイメージが湧きません。聴覚でイメージが湧きます。これがリスニング向上のカギです。つまり右脳でイメージが閃くように、左脳を鍛えるのです。

中国語を二・三音節単位で聞く

ピンインを一文字も聞き漏らすまいと頑張って聞いても、日本人にとって正確に聞き取るのは至難の技です。特に介詞の,,,,,などの発音は短くて小さく聞き取り辛いです。音節と音節が繋がる時は、一つの発音にも聞こえます。加えて地方間や個人間で発音が異なります。また初級者は発音をカタカナで覚えるので、頭の中で単語を探しても見付からず、頭が真っ白になり尚更です。

中国語は複数の音節を有する漢字を並べたものです。その音節は子音のji,qi,chi,zhi,tiなど良く似た発音も多く、その発音が大変短くて聞き取り辛く、二音節や三音節にまとめて聞くと聞き取り易いことが判っています。

発音の最小単位を音節と言い、日本語の「かたかな」は一文字が一音節です。中国語の“谢谢は音節が2つですが、日本語の「ありがとう」では5つも有り、音節の数が多い日本語の聞き取りは容易です。反対に日本語を聞く一本調子の聞き取り方では、中国語の聞き取りは難しいと言えます。

►リスニングは閃きを鍛えること

日本語は音節を順番に聞いていくと分かるので、言葉に抑揚を付ける必要もなくフラットです。中国語は声調が伴わないと何を言っているか分からず、声調という抑揚を付けます。これが中国語のリスニング向上の決め手になります。

またリスニング時、ピンインを頭に浮かべ、漢字に置き換えて意味を理解していたのでは、話す速度に付いていけません。イントロクイズのようにイメージが頭にパッと浮かぶようにしなければなりません。その浮かぶイメージは、差し当たり日本人にとって馴染みのある漢字という記号になります。どの漢字がイメージに当てはまるか頭を高速回転させ、イントロクイズの要領でアタリを付けるのです。

►中国語対応の脳と耳

参考書にはシャドーイングが効果的と書かれています。中国語話者のモノマネをして、リズム感を掴み記憶します。例えば童謡の「は~るの♪♪」と聞けば、パッと「春」が浮かぶ要領です。声調のリズム感を身に付けるため、声を出す音読で正しい声調とピンイン発音を身体に染み込ませます。

欧米人は漢字を知らなくても、中国語を話せる人がいます。英語は表音文字ですが、「Oh,my god!」や「I go to schoolなどは読まなくても一つの単語に見えて、パッとイメージを頭に浮かぶようです。中国語では“KFC”のような外来語は肯德基のように、それに近い発音の文字を用いる表音文字法で表記します。このように中国人はピンインに対して大変敏感で、聞けばその単語の意味やイメージを瞬時に頭に浮かべるようですが、日本人がそこまで到達するには少々ハードルが高いです。

 

私たちはやみくもにリスニングや口述筆記を重ねても、時間が幾らあっても足りません。原点に返って、効率の良いリスニングのやり方を思考するのも、一つの賢明な選択です。今までピンインを頭に浮かべていたリスニングから、漢字がパッパッと閃く中国語対応の脳と耳へ鍛えていくやり方です。今回は漢字を文字でなくイメージとして閃かせるリスニングトレーニングを取り上げました。他にもリスニングのコツがあると思いますが、一つのやり方の例として参考にしてください。ある日突然、聞き取れるようになったと実感できることを祈ります。加油!

入門編/発音の学び方~子音と母音は分けて発音

今月の「入門班」ではピンイン学習しています。ピンイン音節において「子音と母音を分けて発音する」について紹介します。

►ピンインは子音と母音の結合

中国語で日本語に近い発音としては 、[ai4][an1]などがありますが、その割合は3割と言われています。残る7割は日本語と異なり、日本語のカタカナでは発音できません。

中国語は「子音+母音」が結合しています。「子音と母音を分けて発音する」ことが正確な発音に繋がります。例えば数字の[san1]は、日本語の「サン」でも十分通じますが、厳密には“s+an”、子音sと複母音anが結合した音節です。まず口の形と舌の位置で子音sを発音し、母音anを繋げます。

子音と母音を分けて発音

理解し易い単語で説明すると中国人の姓の[cai4]はローマ字読み出来ません。無理矢理「カイ」と読む人は少ないでしょう。[cai4]は”子音c+複母音ai”で構成されています。子音cは「舌歯音」、上下の歯を軽く噛み合わせた歯の隙間に舌先を近付けて、日本語の「ッ」を摩擦させる発音です。続けて複母音aiの「ァィ」を発音、両者繋げて[cai4]を「ツ・ァィ↓」と発音します。このように子音と母音を神経質に意識して分けて発音します。

日本語訛りの中国語はカタカナ発音が原因

中国の友人は、私の日本語訛りの中国語を聞くと顔をしかめます。

日本語と中国語の発声方法は、基本的に異なっています。日本のひらがなは、子音と母音に分解して教えることはできません。日本語のひらがなの「か」(ka),「た」(ta)や「さ」(sa)の発音は、前の子音”k,t,s”は発声と同時に一瞬に消えて、後の母音”a”の方が強くはっきり残ります。

中国語の場合、中国の小学校では漢字の一文字ずつ、子音と母音に分解して発音を教えます。中国語の発声は、前の子音をゆっくりはっきり言い、後はその子音に合った母音を続けて発音します。「か,,さ」を中国式に発音すれば、kaは「クァ」、taは「ツァ」、saは「スァ」の発声になります。この点が日本語と中国語の発声の基本的に異なる点です。

►ただいま練習中の[zhe4]の発音はとても難しい

[zhe4]の“zh+e”の「子音+母音」は、zhはそり舌の先を上あごに軽く付け隙間から「ヂ」と発音し、eは「ェ」の口の形で「ウ‐ァ」、両者を繋げて「ヂゥ‐ァ」と発音します。zheのどちらも日本語にない発音でとても難しいです。まず発音の近い同音類義語から練習しましょう。

[zhou1]は、  そり舌のzh「ヂ」に  ou「オゥ」  を繋げて  zhou「ヂォゥ」と発音

[zhen1]は、  そり舌のzh「ヂ」に  en「エン」  を繋げて  zhen「ヂェン」と発音

[zhong1]は、そり舌のzh「ヂ」に  ong「オン」 を繋げて  zhong「ヂォン」と発音

上記の流れで[zhe4]:そり舌のzh「ヂ」に  e「ゥ‐ァ」を繋げて   zhe「ヂゥ‐ァ」 ですが・・・。

►音節表とインターネットを利用した学習

 

中国語音節表はピンインの音節を一つずつ確認でき便利です。縦行の子音を口の形・舌の位置・息の吐き方をマスターします。横行の母音は日本語にない発音もあり、これも一つずつマスターします。21個の子音と36個の母音の組合せで、約400通りの発音を全て覚えます。近年は、インターネットによるeラーニング教材も充実していますので、10年前と比べ格段に学習し易くなっています。ピンイン音節の一つずつを音声と視覚で確認して、丁寧に一つずつ覚えていくしか方法はありません。

中国語の補語~スパイスの効いた言い回し表現

中国でも公司年终晚会忘年会)のシーズンが近づき、酒を飲む」機会も増えています。もちろん飲酒運転は中国でも厳禁です。中国では忘年会の費用は会社が負担、優秀社員の表彰やゲームや抽選をして賞金や賞品を授与し、幹部が各テーブルを回って従業員の労をねぎらうスタイルは日本と変わりません。その他、春節前には年越しの商品や特別手当を支給するなどします。さて「飲む・食べる」を例に挙げて補語の用例を見てみましょう。

►酒を(飲む)の色んな言い方

動詞の喝了「飲んだ」と言っても「飲み干したのか」,「飲み終えたのか」どのような状況で酒を飲んだのか知りたいところです。中国語は動詞の後に補助成分を付け、意味を拡張させる用法があります。例を挙げると喝光了(飲み干した),喝完了(飲み終えた),喝空了(飲んで空にした),喝多了(飲み過ぎた)などが実感のある言い方です。

中国の酒は非常に度数が高く飲めない人も沢山います。この「飲めない」と言う表現も色んな言い方があります。喝不了(元々飲めない),喝不下(飲み過ぎて飲めない), 喝不起(金がないので飲めない),喝不到(酒が無いので飲めない)などです。その他構文の動詞には補語が必要です。

は多くの造語を産み出す魔法の単語

次に「飲む」以外に「食べる」を考えてみましょう。の左辺は(くち)、右辺を構成する(くも)の象形は気流が乱れる状態「口が滑らかに動かない(どもる)」が原義です。現代では「食べる」以外に、他の動詞を付けて造語の役割が主になっています。その結果「食べる」以外の全く別の造語がたくさん作られています。吃力(骨が折れる),吃惊(驚く),吃醋(やきもちを焼く),吃苦(辛酸をなめる),(損をする),吃香(歓迎される),吃重(責任が重い),吃不开(歓迎されない),吃不出(耐えられない),吃不准(自信がない),吃不消(やり切れない),吃不透(しっかり理解できない), 吃不上(食いはぐれる),吃不下(食べられない),吃饱了(お腹いっぱい),开吃(さあ食べよう)など、まだまだ多くの単語があります。

意外なことには良く用いる単語です

日本では「死」は縁起の良くない言葉ですが、中国語では「非常に~である」の用法でよく使います。累死了(まったく疲れた),吓死了(とてもびっくりした),忙死了(忙しくてたまらない)、死了(面倒くせい),高兴死了(嬉しくてたまらない)などです。

「命」を用いた言い方としては热得要命(暑くてたまらない),饿得要命(腹が減って仕方ない)。両語ともどちらかと言うとネガティブな表現で用います。

日常よく使う生活用語

身近な生活用語を少し紹介しましょう。配眼鏡(めがねをあつらえる),(歯を治療する),淋雨[lin2yu3]雨に濡れる),全勤(皆勤),不经意(気にかけない),は「休む」以外に假货(にせもの)、は「逆さ」以外に倒一杯茶(茶を注ぐ)という用い方をします。

面白い単語では野孩子(しつけの悪い子),累屁了(とても疲れた),二手(中古),耳背(耳が遠い),不求人(背中を掻く孫の手), [jue1zui3] (ふくれっ面をする),太阳很大(日差しが強い),晒油[fang4shai4you2](日焼け止め),太牛了(すごい), 数不清(数えきれない),有数(よく知っている)など話しています。中国から届く最近1週間のグループ投稿では、之子運の強い人),正儿八(几帳面),七情六欲(人の諸々の情欲),功不唐捐(努力をムダにしない), 券在握(勝利は確実!),不苦(まだしっかり練習が必要!),(間が抜けている)などの使い勝手の良い四文字熟語を多用しています。当地中国に行かなければ、なかなかお耳に掛かれない言葉です。

中国語ネイティブのサポートを受けてこれまで5回に亘り、中国語の用法を紹介してきました。

 

いよいよ今年も残り僅か、次月は中国における今年の最新流行語をお届けします

漢字の「请(qing3)」の例から見る中国語の特徴

中国語の漢字は一文字で多様な意味と用法を持ち、それが日本の漢字と異なる点です。たとえば色んな用法を持つ単語です。挨拶の多关照よろしくお願いします」、どうぞお座りください」、请进お入りください」など敬語としてよく用いられます。春秋戦国時代末期(BC300年)に繁体字の誕生し、左側のはその意味を表す文字、右側のは発音を表す文字を組み合わせた漢字、簡体字ではと書きます。日本に伝来してから「要請,請負,請願」などの和製漢字が生まれました。

の語源を辿る

左側のの下にある口の文字は、神に祈る祝詞(のりと)を入れる箱を示し、その上に刃物を置いた象形文字です。神に祈祷する言葉に偽りがあれば、この刃物で刑罰を受けるという意味を持ちます。古代の意味は上位の人や目上の人に謁見し、敬語を使いお願いし、時には許しを請い、懇願のためお招きして接遇するなどです。現代中国語も同じように①求める②敬語③させる(してもらう) ④招聘するなど基本的に変わっていません。

は「おごる」の使役動詞

一般には敬語の「どうぞ~ください」の英語pleaseのイメージを持ちます。でもなぜ「おごる」の意味に結び付くのか違和感を覚えます。解明していくとは使役動詞の「させる=してもらう()」の働きを持っており、を敢えて使役文で書けば、你做客私はあなたを客にさせます(なってもらう)」となり、省略されてとなりました。他の例を挙げれば今天我女朋友做晚(今日は彼女に晩御飯を作ってもらう)と「~してもらう」のニュアンスで使います

他方 请喝茶などのは使役動詞ではなく、敬語()の使い方です。目上の人や普段あまり会わない人に敬語のを使います。自分から所望する時は、请给我一杯茶(お茶を一杯下さい)とやはり敬語のを付けて丁寧に言います。

请假は一つに括られた離合詞

会社で我今天身体不舒服。明天我想请一天假(今日は体調が悪いので,明日休暇をとりたいです)のように日常よく使います。この文例の(休暇をとる/もらう)も、なぜを用いるのか違和感を覚えます。この使い方は「求める①」の動詞に、目的語のを付けた離合詞として南朝時代(AC500年頃)に誕生し、一つに結合した語句になっています。前述の使役文形式の「×我请你请假」に置き換えることはできませんは「動詞+名詞」の離合詞、この後に目的語を置けません。以外には请问,请教,请示,请求があります。の三つの語句は「動詞+動詞」で目的語を置ける普通の動詞です。したがい请假目的語を置くなら、假期放假なら文として成立します。他には他向医生请病因(彼は医者に病因を教えていただく)など、動詞の後ろに目的語を置きます。

結言

これまで述べたことを纏めれば、中国語にも文法は存在するのですが、英語のように厳格なものでありません。英語は発音通りに記述する表音文字、中国語は漢字の一つひとつがある対象を総括した概念を表す表意文字です。中国語の漢字一つひとつが、多様な意味と用法を有します。したがって英語と同じような明瞭な文法体系ではないですが、中国語の文型として成立していればいいのです。中国語の文章を作るには漢字一文字ずつをブロックのように繋げていきますが、基本文型や組合せの熟語(殆どが二文字熟語)を覚えることも大切なことです。

 

(写真:保定市名酒の広告看板)

漢字の変遷~ 時代とともに変わる中国・保持する日本

中国と日本において、同一漢字でも用法の異なる漢字が多数あります。例えば[hui4]などの動詞は中日間で用法が異なっており、中国語学習者を悩ませます。

の違い

中国語の[jian4]の字源は、「目」の下にを付け膝まずいて見る様子を表現しています。[kan4]は、「目」の上に手をかざして遠くを見る様子を表しています。の状況・状態を見る所作から、名詞の[mian4](顔)を付けると「会う」と言う意味になります。を用いた例文では初次(初めまして)、(さようなら)など、「会う」として用いられています。

一方中国語のは、看电视(テレビを見る), (見える)は「見る」の意味で用いられています。日本語の漢字「会」は「会う」ことを表し、を用いません。「看」は日本語では「世話をする、見守る」、中国語では「見る」の意味で使われます。このように同一漢字でも意味が異なります。

[wen2]は臭いを嗅ぐ意味

漢字を見て意味が想像できない漢字もあります。その一つが中国語のです。日本語では「聞く」の意味ですが、中国では「嗅ぐ」と言う意味です。春秋戦国時代末期(BC300年)の古文書に酒香(酒の香りを聞く)とあり、「嗅ぐ」と言う意味で使われ始めたようです。日本の酒造りや香道の世界では、今でも「香りを聞く」という雅な言い回しが残っています。

「行く」の色んな言い方

日本語の「行く」は、中国語ではなどの複数の動詞があります。例文を挙げると、我去公园(公園へ行く),走吧(行こう),我上街(街へ行く),行路(道を歩く)など、場面に応じて使い分けします。なお中国語のは、日本語では「走る」の意味ですが、中国では「歩く」の意味、走着去(歩いて行く)などと言います。奔走逃走などの中国語の熟語を見ると、まだ当初の「走る」という意味を留めています。

古代の漢字の意味を保持する日本の漢字

日本では中国から伝わった古来の伝統文化を今でも残し、既に中国では廃れてしまった文化・習慣も守っています。例えば、雅楽、茶道、身近なところでは和服、ひな祭りなどです。同じように中国の漢字も、時代とともに意味・用法が変化しましたが、日本側では漢字の伝来当初の意味を保持しています。日本側の意味の方が、1600年前の漢字本来の意味となります。

中国語の漢字一つ一つの文字は、時の移り変わりとともに複数の意味と用法が増え、複数の品詞(////量詞)の働きも加わるなど、用法が複雑化しました。日本語の用い方はそれらの一部を簡単な形式にして導入されています。今から1600年前、非常に高度な教養を持った人たちが、漢字の構成を分かり易い形に整理し、大和言葉に合うようにして定着させたものと推察されます。これまで述べたことを頭に置きの五文字を眺めれば、日本側の意味が漢字本来の象形的な原義を示していることが分かります。

 

因みに中国語の[kun4]は「眠い」の意味ですが、繁体字の[kun4]を簡体字に変える際、左側の目辺を省きとしました。日本語の「困る」とは関係がありません。

中国語の来(lai2)~色んな用法を持つ面白い動詞

中国に滞在時 動詞の[lai2]において、本来の意味である「来る」以外の用例を度々耳にしました。は向こうからこちらへ「やって来る」の基本的な用法以外に、「積極的にやる」と言う意思や「人に促す呼びかけ」あるいは「料理の注文」、加えて「方向補語」の用途を持つやっかいな動詞の一つです。

の語源を辿る

語源を辿ると[lai2]は、たわわに実った麦を表す象形文字を表しています。と麦の文字の関係は、今から3300年前、文字を持たず、まだ口語でコミュニケーションしていた頃、「やって来る」と言う表現を“ライ”と発音していました。その時期「大麦」が西アジアから中国に伝わり、食料問題が解消、感激して「天から大麦がやって来た!」と大麦を同じ“ライ”(注1と呼びました。その後、象形文字が発案され、麦が[lai2]を表す象形文字として用いられました。しかし時を経て、を同一文字で用いることは混同して不便であり、後に[mai4]と言う言葉が新たに誕生しました。この「来る」を意味するが、人の積極的意志を表す言葉へ派生し、以下のような言い方へ拡張していきます。

►積極的にやると言う意思表示

(去も同様の使い方)は、話し手が聞き手の場所へやって来ること、聞き手との距離を縮める積極性を表し、積極的な行動の含意を持ちます。の後ろに動詞を付けて積極的に「何かをやる」と言う用い方で表現します。例を挙げると你先洗澡,我来做(あなたが先にシャワー浴びて、私がご飯作るから)、我来吃(さあ餃子を食べるぞ)、我来介一下(では私が紹介しましょう)、今天我来(今日は私がおごります)などと言えます。その他の参考例として、你去买东西,我来收拾行李(君は買い物に行って、ボクは荷物を片付けるから)のも同様に積極性を表す用法として使います(本文では説明省略)

►人に促す呼びかけ

同一場面で話し手と聞き手が存在、双方が共に認識し即時性を持つ行動には、後続動詞を省略しで「する、やる、作る」として代用できます。例文として、你感冒了,我来洗衣服(あなた風邪引いてるから、私が洗濯するよ)の言い方を、你感冒了,我来,我来あなた風邪引いてるから、私がやるよ)、你累了,我自己来(君は疲れてるから、自分でやるよ)と後続動詞を省略してものみで十分通じます。

また、を「人を促す呼びかけ」に用いる例としては、来!我干杯吧(さあ、乾杯しよう)、来来来!吃吧(さあさあ、食べて)などがあります。今でも来来来!を聞けば何かが始まると、当時の緊張感を思い出します。これらは、来来(おいでおいで)から派生した用法と推察されます。

►料理を注文する

飲食店へ入ると服務員が、您来点什么?(何になさいますか?)、我来一杯咖啡吧(コーヒーを下さい)、または再来一瓶啤酒(もう1本ビールを下さい)とを使います。また注文した料理が出て来ない時は、我点的菜没来(頼んだ料理がまだ来ていません)と言えば通じるので、これらの事から、は「注文する」と「来る」の両方の意味合いを持つと考えられます。これらの文例で登場するも色んな用法を持ちます。宴会のホスト役になれば、服務員から、点菜(ご注文しますか)と必ず問いかけされます。は「調べる」と言う意味を持ち、会食などで(メニュー)を見ながら料理を選んで注文する場面の言い方になります。前述文例の您来点什么?は、点儿(少し、ちょっとした)の量詞、下午三点半(午後3時半)のは名詞、このようにも動詞・量詞・名詞など色んな用法を持っています。

中国語を学習すれば、日本語の意味からは想像できない用例に出会います。今から1600年前、日本で選抜された優秀な留学僧たちが、中国から漢字を日本へ持ち帰り、彼らが基本的用法を伝承しました。ただ漢字の派生的な用法については、伝承が難しかった何か理由があり、日本ではが「来る」と言う基本の意味だけが定着したと想像できます。私たちは電子辞書で整理配列された説明記述を丸暗記せざるを得ませんが、漢字の語源を知ることにより、中国語の理解が一層深まると考えます。1)古代では麦を“ライ麦”と言いました。ライ麦と来の“ライ”の同一性はまだ定かでありません。

(写真:麦はを表す象形文字の変遷)

中国語の『打(da3)』~色んな使い方のある単語

動詞のを使うことが多いですが、は色んな使い方をする悩ましい単語の一つです。身近な使い方として、打招呼(挨拶をする)、乒乓(卓球をする)変わったところで一打铅笔(1ダースの鉛筆)などは、それぞれの関連はないですが無意識に覚えています。面白いことに日本語で、は語源の由来を利用した造語として、使われています。打ち合せ(打楽器を打って合わせる)、打ち消す打ち込む打算的などがあり、これらの造語は中国語にはありません。中国語のは、叩くと言う語源を持つ象形文字です。篆書体では、左辺のは片手で叩く動作を表し、右辺のは釘の形、つまり釘を外力で物体に突き刺すことを示しています。元々の意味合いの大鼓(太鼓を叩く)、(杭を打つ)打火(火打ち石で火を起こす)、(注射をする)などは、叩くや突き刺すと言う語源の意味から覚え易い言葉です。手の動作から派生した言葉が他にもたくさんあります。電子辞書では語源に由来する用途の説明が乏しく、中国情報ネットで単語の本来の形や意味から、派生する使い方を調査してみました。

►一番目の使い方:スポーツはで表現することが多いです。打网球打排球打太极拳打棒球などは良く知られています。を使わないスポーツもあります。それは手を使わないサッカーで、踢足球[ti1zu2qiu2]と言います。手を使う動作については、を用いると覚え易いです。他にも打毛衣(セーターを編む)、打开(開ける)打印(コピー)、打雨(傘を差す)、(注1)(タクシーを拾う)、打灯(ちょうちんを掲げる)などは、手を使う動作から派生しています。その他には(魚を捕る)、打水(水を汲む)、打扫(掃除する)、打跑(包装する)、打游(ゲームをする)などの動作も手によってもたらされています。

の使い方の難しい点は、手を使わない活動にもが使用されることです。中国語学習者にとって、悩ましい点を以下に紹介します。

二番目の使い方:使い方が[zuo4]に近く短期間に具体的なアクションを示したい場合。例えば打架(喧嘩する)、打工(アルバイトをする)、打扮(着飾る)、打量(じろじろ見る)、打算(する積りである)などがあります。

►三番目の使い方:努力や労働で獲得する活動の場合。打票(切符を買う)、打折(値引きする)、打听(問い合わせする)などがあります。

►四番目の使い方:自然界の現象や人々の行動が外に向かって発出する場合。打雷(雷が鳴る)、(稲光がする)、碗打了(茶碗が割れた)、电话(電話を掛ける)。日本語でもかつて「電報を打つ」との言い方がありました。

►五番目の使い方:人から発せられた特定の行動。(くしゃみをする)、打盹儿(居眠りをする)、(邪魔をする)などがあります。

上記で挙げた単語は元来 手でするある種の動作であったものと推定されます。例えば打折は手で折る動作の意味から、長い商品を折って小さくすることで値引くと言う意味合いになったと考えられ、打算も計算用具の(長方形の小さい木片)と手でするある動作を結び付いたと想像できます。

 

 

これまで述べたようにの日本語の意味からは、想像できない色んな用法がまだ沢山あります。すべてを丸暗記する必要はありませんが、語源から来る由来に基づく使い方を知っておくと覚え易いでしょう。(注1打车は手を振る行動から派生しています。

 

 (写真左:西省郑州市小学校での販売実習、写真右:感想文

河北省保定市の名物料理~ロババーガー

河北省保定市へ出張した夜、取引先から「今晩は保定の名物料理を食べに行きましょうか」とお誘いがありました。中国の食文化は多種多様で長い歴史を持っています。中国の地方には独自の料理があり、旅先で当地の名物料理を味わうのも楽しみ一つです。保定市名物はロバの肉をパンに挟んだ驴肉火烧[lv2rou4huo3shao1]ロババーガー)が有名です。

馬は農耕にとって貴重な労力ですが、戦場で使える武器ともなります。皇帝が暮らす首都北京と保定市は、距離的に近く首都を外敵の侵攻から守るため、かつて馬の飼育は禁止されロバしか飼うことができませんでした。その関係でロババーガーやロバの焼肉などのロバ料理が発展し、保定市には驴肉烧肉饭店[lv2rou4fan4dian4]が沢山あります。日本ではロバの食習慣がないので、ロバ肉と聞くと怪訝そうな顔をします。でも実は熊本の馬肉が美味しいように、ウマ属のロバ肉も美味しいのです。中国では天上龙肉地上驴肉[tian1shang4long2rou4di4shang4rou4]「天国には龍の肉があり、地上にはロバ肉がある」と言う俗語があります。よく似た俗語として天上有天堂地下有、「上には天国があり、下には蘇州と杭州がある」と言うように、良いものを強調する時に最上位のものに引っ掛けた言い方をします。

ロバ肉は牛肉のように柔らかくて、魚肉のようにサクサクした食感、臭みもなく美味しいです。西安市ではロバ肉の「塩漬け」が有名で旅行者は必ず買って帰ります。ビールのつまみに良く合います。数年前、保定市で大気汚染が酷くなった時期、市内へのトラックの進入が全面禁止されました。そこで久々にロバ車が復活しました。ロバは気分屋の頑固者で自分が気に入らなければ働こうとせず、豚や牛のようにおとなしくないと車夫は言います。

ロバ肉バーガーに使われるパンは、烧饼[shao1bing]と呼ばれ、小麦粉を練って表面をカリカリに焼きます。ちょうどピザパンをさらにカリカリに焼き上げたようなもので、このカリカリとロバ肉のサクサクの食感こそがロババーガーの売りです。調理人が食べる直前に味を付けたロバ肉を細かく刻んでパンに挟んでくれます。初めから刻んでおけば良よさそうなものですが、食べる直前に刻むのは何か理由がありそうです。保定名物の驴肉火烧は、西安名物の肉夹[rou3jia1mo2]に良く似ていますが、肉夹は羊肉をパンに挟んでいます。食べると手指が油でジトジトになります。ロババーガーを食べに保定市まで足を延ばすのはなかなか大変ですが、西省西安市へ旅行した時に、少数民族が暮らす回民街をぜひ訪ねて名物の肉夹馍を味わって下さい。

 

 

(レストランの紹介写真より、左:保定市肉老店の驴肉火烧、右:西安市刘嫂肉夹馍店の肉夹)

中国で生活して便利と思うもの

中国で生活していて、「これは便利!」と思ったモノが沢山ありました。最も便利なモノはスマホ決済です。中国の代表的なスマホ決済としてwe chat pay支付宝があります。市民生活に浸透しており、なんと路上で野菜・果物を販売している露店や行商人への支払いもスマホ決済、果ては個人間で送金ができ少々驚きました。スマホ決済は日本でも徐々に増えていますが、普及率はそれほど高くありません。日本よりもっと早い時期に、スマホによるタクシーの呼び出し、鉄道・飛行機のチケット予約もできました。本当に便利になっています。

私が中国へ赴任した2013年頃、「今日の天気はどう?」と聞くと、同僚は「あと何時間後に雨が降りますよ!」と教えてくれました。中国人はどうして雨の降る時刻まで分かるのかなと不思議に思っていました。日本では雨雲レーダーが利用出来るようになったのは最近ですが、当時 中国ではローカルエリアの時間刻みの雨情報を得ることができました。

次に阿里巴巴(アリババ)の通販ネットです。中国では一般に夫婦共働きですので、日中の荷物の受取ができません。それで街角にコインロッカーのような受取用ロッカーを設置し、スマホで開錠信号を送って荷物を取り出すシステムが出来上がっています。日本でも最近見掛けるようになりましたが、中国が先行しています。そして扫马自行(シェアサイクル)です。予め会員登録しておくと街角に置かれている自転車をスマホで開錠し乗ることができ、何処へ乗り捨てても自転車に搭載されているGPSを頼りに回収車で回収します。

日本では漸く「マイナンバーカード」が普及し始めました。中国ではICチップ内蔵の次世代型身份を全国民が保有しており、各種手続きでなくてはならないものになっています。2013年の着任時には、すでに銀行で預金通帳が無かったし、ネットバンクへ変わっていました。

このように中国ではICT(情報通信技術)が急速に進歩し、ライフスタイルが変わっています。この分野において、中国は日本より遥かに進歩しています。しかしながら、ICTが急激に進歩し、活用できる人は益々便利になりますが、高齢者など活用できない人にとっては益々不便になる「デジタル格差」と呼ばれる社会問題が発生しています。

手軽な乗り物では电动自行车(電動自転車)が便利です。日本のアシスト機能付自転車でなくて、原付オートバイと同じ乗り物です。免許が不要で法律上は歩行者と同じ扱いです。1回の充電で40km程度走れ、かなりスピードも出るので広い中国大陸では重宝な乗り物、爆発的に普及しました。かつては自転車の洪水、今や電動自転車の洪水です。道路には立派な自行车专(自転車専用道)が設置され安全に走行ができます。しかしバッテリーが突然発火する現象が発生し、その対応に追われています。自転車専用道は、車一台が悠々に走行できるほどの幅があります。国土が広いので羨ましいです。

日用品では雨具の「ポンチョ」が便利です。雨が降れば上から簡単に着ることができ、下が開いていますので蒸れることもありません。日本でも最近チラホラ見掛けるようになりました。

冬の季節は足首までスッポリ包み込む「防寒スリッパ」が重宝します。足首まですっぽり覆うのでとても暖かいです。公園に行けば「健康道具」が設置されており、手軽にストレッチ体操ができます。健康道具だけでなく、卓球台・将棋盤まであります。そして「広場舞い」ができる広いスペースがあり、皆で音楽に合わせて踊っています。

 

 

前段で述べましたが、諸外国に比べて日本のICTの普及は遅れていると言われています。ようやく政府はデジタル庁を創設し、普及に本腰を入れ始めたようです。

(写真左:電動自転車、写真中:ポンチョ、写真右:防寒スリッパ)

日中によるお礼やお詫びの言葉の違い

日本でレストランに入って料理を注文したい時、「すみませ~ん」と言ってウエイトレスに注文します。中国では料理を注文したい時、日本語の「すみませ~ん」に相当する言い方として、务员[fu2wu4yuan2]と言います。中国のレストランは大抵賑やかですから、普通に「フーウ・ユェン」と言っても気付いて貰えないでしょう。少し間延びさせて「フーウ・ユェ~~ン」と言うと日本語の「すみませ~~ん」のように声が良く通り、気付いてくれる筈です。食事が終わると日本のレストランでは勘定書きをテーブルの上に置いてくれます。中国の場合は会計カウンターまで歩いて行って支払いする所が多いです。会計カウンターでテーブル毎の料金を把握しています。中国では割り勘と言う習慣がありませんから、目上、年長者、上司、またはその日誘った人が支払います。仲間同士の食事なら、いつも面子を意識し、払いたい男気のある者同士が会計カウンター前で揉めています。この時、私が払うからと言っても、先方がいやいやこちらで払うからと言われれば、日本人の場合は大抵そこで引き下がります。中国では簡単には引き下がってはいけません。3度も4度も強引に押し戻さなければなりません。時には気付かれないように隠れて先に支払いを済ませる人もいます。割り勘と言う習慣がないから、こうなってしまうのです。

中国で初めて会社を訪問した時、大抵は一緒に食事でも如何ですかと誘われます。日本のように遠慮して辞退すると私と親しくなりたくないのかと勘繰られますので、遠慮の必要はありません。中国の人間関係において会食は重要な儀式、その為に街はレストランで溢れかえっています。

中国では親しい人と食事した時に、ご馳走になった側から「幾らでしたか?」と聞いても問題がありません。「安かったね」は褒め言葉ですが、「高かったですね」は味の割に値段が高かった、つまり不味かったと言うことになります。また食事の後、お礼を言いますが次にまた会った時に「この前はご馳走さまでした」と普通は言いません。言えばまたご馳走して下さいの意味になります。お礼は1回言えばそれで良いのです。別れの挨拶も同じです。一回別れの挨拶を言えば、日本人のように何度も振り返って「さよなら」と手を振りません。また、一度 家へ遊びに来て下さいと誘われれば、訪問しても問題ありません。本当に大喜びされます。

日本語の「すみません」は便利な言葉で、謝罪や感謝そして依頼など色んな場面で用います。中国人は日本人が簡単に「すみません」と言うような用い方はしっくりしません。筆者の滞在中、不起不好意思を聞くことが滅多にありませんでした。特に不起は比較的重い言葉、自分の不手際や過ちを認めたことになり、謝罪を言葉だけでない形あるものを求められる時もあって、使い難いのです。レストランで料理を頼む時、「すみませ~ん」となぜ客が謝らないといけないのかすっきりしないのです。文化大革命で古き良き習慣を破壊していく中で、とうとう儒教の教えも否定した時期がありました。この謝りづらい感覚はその後遺症として残っており、今の中国っ子の悩みの一つだと思います。

 

日中国交再開の交渉時、ある元総理が「多大のご迷惑を掛けました」と述べた挨拶を通訳者が很大的麻烦と通訳し、言葉が軽すぎると大揉めになったことがありました。中国語の麻烦は「面倒を掛けた」程度の軽い意味になりますので、国家間で共同声明を出すような重要な局面では、謝辞の言葉は国際的に通用する明確な表現が求められます。

 

(写真:「サービスに満足できなければ無料」の案内板を掲げた保定市内ファミリーレストラン)

今年の清明節

今年の清明节[qing1ming2jie2]4月5日でした。この日は祭日で企業や官公庁はお休みとなります。清明とは墓参りの日、故人やご先祖を敬う気持ちは中国も日本も変わりません。

中国語で墓参りは扫墓[sao3mu4]と言い、漢字では墓を掃き清めると表しています。都市部では、郊外に公墓と呼ばれる共同墓地が整備されていますが、まだ公墓が整備されていない農村部では、まだまだ畑の一角に土葬するところが多く、高速道路を走ると畑に丸い盛り土が目に付きます。45日の夕暮れ時、保定市の交差点では、いくつものお焚き上げの炎が目に付きます。亡くなった家族や祖先があの世でお金に困らないように、お金に似せて作った「紙銭」を燃やします。近年、大気汚染防止のため花火やバーベキューなどは禁止されましたが、この「紙銭」のお焚き上げは規制されていません。交差点のような十字路でお焚き上げを行う理由は、十字路は東西南北に通じ、どの方向からでも来ることができ、この世とあの世が交わる場所とされています。

またこの日は多くの人が墓参りに訪れます。墓掃除をして花やお菓子、故人が好きだったお酒などを供えます。お参りする時、日本では墓前で手を合わせますが、中国では手は合わせず深々とおじぎを3回します。ひざまずいて額を地に付け3回拝礼するのも一般的なお参りのやり方です。

実は清明が制定されたのはまだ最近のことです。以前の当レポートで中国では19661976年の10年間に亘る「文化大革命」で伝統文化や文化財が破壊され、更には社会規範と行動様式、人々の道徳・倫理観も変えてしまったと述べました。この時期に清明も祭日でなくなってしまいました。2007年に再び国定祭日に制定され、今では大切な節句として扱われています。

 

(写真左:十字路で紙銭を燃やす、写真右:屋台で売られている紙銭)

中国の朝食と漬物の話

日本では家で朝食を取りますが、中国では通勤や通学途中、外で朝食を済ませる人が多いです。路上には朝から屋台や個人店が多く出ています。朝食の種類は、面条[mian4tiao2]()[zhou1]おかゆ)、馒头[man2tou](蒸しパン)油条[you2tiao2](揚げパン)[jian1bing](クレープ)豆浆[dou4jiang1](豆乳)などが一般的です。それを通勤途中に買ってビニール袋に入れて会社へ持参し食べます。その中で(おかゆ)は中国の朝食の定番になっています。お粥は漬物を付け合わせにして食べます。ホテルではお粥の入った鍋の横に、小さく刻んだ色んな漬物が置かれ、シャモジで掬ってお粥に掛けます。中国語で「漬物」を咸菜[xian2cai4]と言います。今回は中国で一般に食べられている漬物を紹介しましょう。

まず日本でもお馴染みの榨菜[zha4cai4]ザーサイです。日本のスーパーでも瓶詰された榨菜が販売されています。中国の飛行機では、この漬物とパンが一緒に出てきます。地方の安い民宿でも朝食に蒸しパンと一緒に出され、塩味が効いた漬物とパンがほど良くマッチし、シンプルで懐かしい味です。榨菜は「からし菜」のコブ状に膨らんだ茎の部分を用い、四川省や浙江省余姚市が主要な生産地になっています。日本でも福島県や茨木県で栽培されているようですが、それほど量は多くなく、殆ど中国からの輸入のようです。余姚市を訪問したことがありますが、この地は春秋時代(BC770BC221)に中国四大美女の西施[xi1shi1]が生まれ育った所で、その美しさに月も雲の影に隠れてしまったとか、川の魚も泳ぐのを忘れて沈んでいったなどの逸話が残っています。榨菜の歴史はまだ100年と浅く、四川省で豊作になり採れ過ぎた榨菜を塩漬けにして、レストランで出したところ、好評で全国に広まったようです。榨菜を甕に入れて塩漬けした後、塩や唐辛子などの香辛料と砂糖、お酒などを加えてさらに1年以上漬けこんで作ります。歯ごたえが良くて美味しい漬物ですが、なぜ日本で普及しないのか不思議です。

中国の一般的な他の漬物を紹介しましょう。

酸菜[suan1cai4]は中国東北地方を代表する酸っぱい白菜の漬物で、薄い塩味と酸味で料理に使い、代表的なものとしてこの漬物と豚肉を一緒に煮込んだ酸菜锅があります。

酱蒜[jiang4suan4]大蒜[da4suan4](ニンニク)を醤油で漬け込んだものです。食べ過ぎると朝の打合せ時、大蒜の匂いに敬遠されますので注意しましょう。

黄瓜[jiang4huang2gua1]はキュウリの漬物です。キュウリと鷹のツメを醤油で漬け込み、キュウリと醤油が良くマッチしてとても美味しいです。中国ではラーメンに薬味としてネギを入れる食べ方を見掛けませんでした。街の食堂ではテーブルに置かれた皿に生ニンニクが積み上げられており、これを薬味としてかじりながらラーメンを食べます。この生大蒜は日本の大蒜と違って辛みがあります。

泡菜[pao4cai4]は四川省から全国に広まった漬物で日本の浅漬けやぬか漬けに似ています。野菜を塩水に10日ほど漬け込んで発酵させた漬物です。漬け込む野菜はキャベツ、大根、インゲン豆、キュウリ、生姜、苦瓜など色んな野菜を用います。日本では漬物は直接食べますが、中国料理の奥の深いところは漬物を炒め物などの料理に使い調味料代わりにして味の引き立て役にも使っています。

 

漬物でも日中の食文化の違いが出ています。日本の漬物は、どちらかと言うとあっさり仕上げて、素材の形・色や風味を残します。中国はしっかり時間を掛けて漬け込み、濃くておいしい旨味を引き出している漬物が多いです。

 

(写真左:白粥和搾菜、写真右:饼摊

海外の一人旅はご注意を‼

中国の四大古都と言えば安徽徽州,四川中,山西平遥,云南の四つの古都を指します。その一つの山西平遥は山西省中部の平遥県に位置し、2700年の歴史を持つ世界的に有名な古い街です。他の古都に比べ最も保存状態が良いとされ、1997年に世界文化遺産として登録されました。

西安に住んでいた時、友人の招待を受け一人で平遥へ出掛けたことがありました。外国の知らない土地の一人旅は注意が必要です。経験談をお話ししましょう。当日、西安市の长途巴士中心(長距離バスセンター)から、午後10時頃発の大原行きの深夜バスに乗りました。西安市と平遥市は直線距離にして約350kmあまり、どこのバスセンターでも同じですが、到着が何時になるのか掲示がありません。その日は春節明けの2月、まだ寒い日でした。全く中国語ができないし、長距離バスに乗るなど初めてのことでした。バスが走り始めから、ある重大なことに気付きました。乗客が降りたいときに運転手に合図してバスを止め、降車しているではありませんか。地方では一般に道路上にバス停留所が整備されていません。小さい会社が自由に運行していますので、決まったバス停が設置できないのです。乗客が降りたいところで運転手に合図して、バスを止めて貰わなければなりません。これには大変慌てました。土地勘がないのでどこを走っているのか、どこで降りれば良いのかさっぱり分かりません。幸い地図を持っていたので、隣のおじさんにジェスチャーで平遥へ行きたいと訴えて、最寄りの地点で運転手に合図してくれるように頼みました。深夜三時ごろ、そのおじさんが運転手に合図し、ここで降りなさいとバスを止めてくれました。本当にここが目指す目的地なのか不安がありましたが降りるしかありません。高速道路の路肩で降ろされ、しかも降りたのはわたし一人です。雪が降っていてとても寒かったです。降りた反対側の土手の上に明かりが見えたので、土手をよじ登ると料金所スタンドがありました。寒くて凍死しそうだったので、スタンドの中へ避難させて欲しいと頼みましたが、当然のことながら断られました。そこで仕方なく遠くにぼんやり見える街の明かりに向かって歩き始めました。街灯も無く真っ暗な道をトボトボと歩いていると後ろから自転車に乗った男が何やら声を掛けてきましたが完全听不懂です。身の危険を感じましたが、幸いにその男は去っていきました。そうこうする内に目の前に真っ黒にそびえる城壁が突然現れました。暗い中で黒く浮かび上がった城壁のシルエットはなんとも不気味です。入り口が見つけるためにその壁伝いに歩いているとの看板が見え、「そうだ!駅の待合室で夜を明かせばいいんだ!」と駅へ向かいました。待合室は真っ暗、切符売り場もシャッターが下りていました。壁際にスチーム暖房のラジエーターがあるのが見え、その前にしゃがみ込んで暖を取っていたところ、背後から顔の前にフッと手が出てきました。振り返るとボロ布に身にまとった物乞いが立っていました。これには心臓が止まるほど驚きました。そこで小銭を渡して、あっちへ行けとジェスチャーで追い払いましたが、物乞いが何人か居るのが暗がりで見え駅の待合室は危険と判断し、幸い近くにホテルがあったので避難しました。服務員の親切な配慮により、ロビーで一夜を明かさせて貰い、無事に友人と再開することができました。友人と再会した時、夜中の一人行動は危険であり、なぜ連絡をしなかったと叱られました。さて帰りは友人の車で郊外まで案内してもらって、停留所もない道路脇で待っていると西安行きのバスがやってきて、無事に西安へ戻ることができました。

このように海外の交通事情は、日本とはかなり異なります。日本の感覚で旅すると思わぬトラブルに巻き込まれます。中国は比較的に治安が良いとは言うものの、置き引きの被害に会ったことがあります。列車の切符は当日購入ができず事前に手配が必要、ホテルは外国人が泊まれるホテルに制限されるなど自由に旅行ができません。旅行会社へ予約しておくか、現地の情況を十分調べるかなどしてからお出掛け下さい。

 

 

(写真左:平遥古城の城壁、写真右:平遥古城の街並み)

春節~中国のおせち料理「八大碗」

新年新春兔來報,金兔銀兔福兔到,兔年發財樂逍遙!

 今年の春節は122()です。中国には日本と同じような「おせち料理」があります。それは八大碗と言う伝統的なお祝い料理です。清朝時代に経済が栄え飲食市場も空前の発展を遂げ、春節や婚礼など慶事に食する伝統的な民間料理として八大碗が広く普及し、今日も継承されています。河北省石家庄正定八大碗が特に有名で千年以上の歴史を持ち、河北省の無形文化財に指定されています。八大碗専門のレストランも数店営業しています。

八大碗は4種の野菜料理(四菜)と4種の肉料理(四肉)を基本とします。四菜は大根・昆布・春雨・豆腐を主に他30種の材料を用います。四肉は扣肘(豚の肘の煮込み)酥肉(豚肉のから揚げ)肉丸子(肉団子)方肉(豚の角煮)など豚肉を主とした肉料理です。地域によって使う材料も異なり、他に海老・魚・ジャガ芋・白菜を使う所もあります。天津市の八大碗は、豚肉・団子・鶏肉・魚・麺・塩海老・豆腐・豆腐卵・野菜などの材料を用いて作ります。肉は真っすぐに切る、野菜も厚さを均等に切るといった細かな決まりがあります。野菜の4皿は碗に入れて蒸すだけで良いですが、肉の4皿は、油に通したり、蒸したり、煮込んだりして作ります。その調理法には「(ba1)(men4)(jiang4)(kao3)(dun4)(chao3)(zheng1)(liu1)」など8種類です。日本料理は、生(なま)・煮る・とろ火・焼く・揚げる及び蒸すなど食材の風味を残して、どちらかと言うとあっさり仕上げて、食材の形と色の盛り付けに気を使います。中国料理は煮る・炒める・揚げる・蒸すなどして時間を掛けて作り、濃くておいしい旨味を出します。

中国語で八珍と言う食料用語があります。八種類の珍味を指し豪華な料理の意味です。日本でも琵琶湖の珍しい8つの魚介類を「琵琶湖八珍」呼んでいます。中国の八珍は「上八珍中八珍下八珍」の3ランクに分かれ八大碗下八珍に該当します。1920年代の北京市上八珍の食材を挙げると「ヘラ鹿の頭・燕の巣・ラクダのコブ・熊の掌・ヤマブシ茸・豹の子・鹿の筋・雪カエル」などですが、今では野生動物保護の観点から入手できない物があります。東北地方で歓迎の宴席に招かれた時、黒いカエルの料理を出されて目が点になったことがあります。このカエルは冬の厳寒の頃、山間の谷の氷を割ってその下に隠れている雪蛤(雪カエル)を網で掬って捕まえたものです。このカエルの油は高級化粧品の原料ともなり、また貴重な食材として高額で取引されています。因みに一般的な「フカヒレ、アワビ」は中八珍、「ナマコ、川筍」は下八珍に属します。

近年、ナマコの密漁が頻繁に報道されています。日本ではナマコは酢の物にする程度でそれほど消費量が多くないですが、中国では高級食材として非常に高値で販売されています。北海道産の乾燥ナマコで高いものなら、何と100g2,600元(49,400円;@19/円)で売られており、和牛より遥かに高いです。ナマコの乾燥品を水で戻して煮込み、柔らかくモチモチした歯ごたえにします。ナマコの歴史は古くAC200年代には食されていたようです。今でも海珍(干しなまこ)(フカヒレ)(ツバメの巣)(干しアワビ)は高級食材として認知され、もし宴席に招待されてどれか一品でも出されたら、最高のおもてなしと考えて良いでしょう。ナマコの中国語は海参(hai3shen1)の効能が「朝鮮人参」に匹敵するとされ「海の朝鮮人参」海参と名付けられました。

一説によると「ガン」に効果があると言われています。筆者も食したことがありますが、ナマコ自体に味はないのですが、色んな味を凝縮しトロミを付け旨味豊かなスープで煮込み、日本料理にはない深い味わいを出しています。 縁起の良い八を重ねるため、八角のテーブル毎に8人が座り、八つの丼に盛られた八種の料理、八種の食材と八種の調理法など八を重ねてお目出たさを強調します。

 

(写真左:八大碗2023年テークアウト品(保定電谷酒店)、写真右:ナマコの料理)

謹賀新年~中国最北-48℃の北極村ツアー

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い致します。

 

シベリアからクリスマス寒波が襲来、日本各地で最低気温を更新しています。日本が寒ければ、中国東北部の寒さはもっと厳しいです。1222日の冬至以降、気温がぐんぐんと下がっています。最も寒い中国最北端の状況を、中国の報道からお届けしましょう。

今冬は黒竜江省の殆どの地域で最低気温が-30℃まで下がりました。最北の漠河市阿木尔では、最低気温が-48度まで下がり、去年40年ぶりに記録した-48.4℃という記録に近付いています。市場の魚は、並べて置くだけで急速冷凍です。漠河市は、ロシアと国境を接する中国最北の最も気温が低い町の一つであり、一年の半分は冬です。厳しい寒さは、住民の生活に色々な問題を引き起こしています。-40℃以上では自分の息で眉毛が凍り付きます。ドアノブに素手で触れると凍り付いて離れなくなり、メガネの弦も肌に引っ付くので注意が必要です。屋外は非常に寒くて数十分も居れず、移動の時は車が必須です。

気温が-30℃以下になると空気中の水分が氷結して霧となる冰霧(氷霧)が発生し、見通しが極端に悪くなります。氷霧は極寒の地域に見られる自然現象で、北海道で見られるダイヤモンドダストとは異なります。ダイヤモンドは-10℃以下で発生し空気中の水分が昇華して氷の結晶が降下する現象ですが、氷霧は降下せずに空中を漂い、気温が-30℃以下で発生、太陽光を散乱させ輝いて見えます。氷霧は風がなく雲もない午前67時に発生し、視界が非常に悪くなり、10mも離れれば人影は見えません。車はヘッドライトを点けてゆっくりと走行しています。視界はわずか10m、道路も凍り付いているのでゆっくりと走行しなければなりません。

 非常に空気が乾燥し湿度は20%です。 肌にひび割れが発生しますので、油性で保湿効果の高いスキンケア製品が必須です。温暖な南部地域から来た中国人は良く鼻血を出します。夜寝る前に枕元に水を入れたコップを置くなどして乾燥を防ぎます。毛皮の帽子やマフラーはもちろんのこと雪による日光の反射が強いので、目の保護にサングラスを着用するようにと旅行会社から注意されます。

更に漠河市より寒い村があります。北緯53°29、シベリアに近く地名を北極村と言い、20091231日には最低気温-52.3℃を記録しました。気温が-40℃以下は日常茶飯事、0℃以下の日は一年のうち8カ月にも及び、7月の真夏でさえ1820℃です。冬季は 屋外に10分も居れば、まつ毛は霜で真っ白になります。北極村も氷霧が発生することで有名です。早朝、屋根や軒下の雪が朝日に輝いて神秘的なピンク色を放ち本当に綺麗です。この寒い時期に北極村を訪ねる4日間の厳寒体験ツアーを紹介しましょう。

 

◇1日:ハルビン駅を漠河市に向け出発。夜行列車K7039(17:33発⇒翌07:25)

◇2日:漠河市から車で87km離れた北極村へ移動。途中の有名な景勝地之冠

    圣老人之家 (サンタクロースの家)へ宿泊。

◇3日:朝食後、中国とロシアの国境を見学。対岸のロシア極東のイグナスイルオ村を

    訪問。国境警備隊第一哨戒所を見学。北極沙州を2.5km程度散歩。

    中国最北の郵便局で記念撮影。北極村で夕食後同村に宿泊。

◇4日:車で漠河市に戻る途中、北極星広場や 国内唯一無二の原生林、大火災記念館を

    見学。列車でハルビン駅へ戻る。

 

(年末に保定市から届いた写真)

中国ではお酒が弱い人が多い⁈

師走に入りお酒を飲む機会が増えて来ました。

中国ではお酒を飲む時、特に注意が必要なことがあります。宴会では自分が酒を飲むか飲まないか、態度をはっきりしておかなければなりません。中日におけるお酒の乾杯の考え方においては、文化面で大きな違いがあります。今日は体調が良くないから、ビール12杯程度で済ませようと考えるのは失礼です。飲まないなら最初から一口も口にしないと、はっきりさせておくことがマナー上の基本です。中国の乾杯は人間関係上の重要な礼儀ですので、途中で飲めないと辞退するのは大変失礼に当たります。

中国の酒はアルコール度数が52度の高い酒もあります。中国人は何度も乾杯を重ねて飲み干し、それを見て酒が強いのだと感心します。しかし中国人も日本人も遺伝子学的には欧米人に比べて酒に弱いとされています。実のところ中国人は日本人よりもっと酒に弱いのです。中国人は酔っ払った姿を見せるとだらしないと見做されるので、特に自己管理しています。飲み過ぎて気分が悪くなり、トイレで吐いてまた何事も無かったかのよう席に戻り、飲み続ける人さえいます。米国と中国の人達と何度か宴会しましたが、概して米国人は酒に相当強く度数の高い酒を飲んでも平気です。米国の西部劇の場面で、ウイスキーをラッパ飲みするシーンを見たことがありますが、このように大変強いのです。

ある報道機関の調査によるとお酒に弱い人の割合は、欧米人0%・韓国人30%・日本人44%・中国人52%だという数値が出ています。元々アジア人も欧米人のようにお酒が強かったのですが、7000年前に稲作が広まった時点で、アセトアルデヒドを分解する遺伝子が突然変異し、酒が弱くなるように進化したのだと言われています。古代に中国から多くの渡来人が日本へ移住し、日本人もお酒に弱い人が多くなりました。最近の報道では、若い人たちは酒を飲まなくなったと言われています。科学的にはアルコールを分解しない遺伝子が出現し、飲みたくても飲めない人が増えています。人間の体内の遺伝子は、対比する遺伝子の一つを優性として選択します。飲める遺伝子と飲めない遺伝子があれば、人類は飲めない遺伝子を選択しました。どうやら人は酒が飲めない方向へ進化しているようです。お酒飲みは変わった人種になりつつあります()

その遺伝子が弱い地域と稲作の広まった地域が一致していることも判明しています。中国南部(上海以南)の人は稲作が盛んで、アセトアルデヒドを分解する酵素を持たず、お酒に弱い人が多いです。度数の高い白酒を好まず、紹興酒を好みます。このため渡来人が多い西日本の人はお酒に弱いのです。また稲作が広まっていなかった中国の瀋陽市、長春市やハルピン市など東北地方の人は、度数の高い白酒を好み大変酒に強いです。遺伝子が突然変異したのは約7000年前ですが、なぜ変異したのか理由は分かっていません。筆者の勝手な想像ですが、米の収穫が増えるに伴い、「飲んべいをこれ以上増やすのは危険ダー!」と判定されたと想像します()

 

(写真左:保定秀蘭飯店宴会場、写真右:中国海鮮料理)

中国の火鍋と香辛料

中国では大きく北京料理、四川料理、上海料理、広東料理の四大料理があります。

その中の四川料理は、唐辛子、山椒などの香辛料を多く用いて辛いです。中国で人気のある火鍋huo3guo1は四川省から生まれ、全国に広まりました。中国っ子は本当に火鍋が好きで一年中食べていますが、やはりこの冬の時期が美味しいです。下の写真は私が通っていた中国の全国チェーン店呷哺呷哺xiabuxiabuの火鍋の写真です。この店の名前を「シャブシャブ」と発音しますが、どうやら日本から逆輸入された単語のようです。日本から逆輸入された単語には、「经济新闻银行人气料理など他にも沢山あります。

呷哺呷哺の火鍋は、とても美味しく誰もが病み付きになります。鍋のスープを鍋底(guo1di3)と言い、種類として泰麻辣麻辣蘑菇(キノコ味)西(トマト味)(カレー味)などが有り、中国っ子には麻辣蘑菇が一般的に好まれます。日本人にとって泰麻辣はとても辛く食べたら、お腹をこわし、翌朝 トイレから出られなくなります。鍋底自体にも味がついているのですが、色んな調味料や薬味の「付けダレ」に漬けて食べます。特製味噌、特製醤やネギ、パクチー、ニンニク、唐辛子などの薬味を適量取り、ピーナッツペーストと混ぜ合わせます。煮立ったスープに牛、羊肉、野菜などを入れ、ゆで上がったらこの特製タレに漬けて食べます。思わず真好吃!と言いたくなります。肉の甘さとタレの深いコクが見事に調和してとても美味しいのです。

感心することは、使用される調味料が実に沢山あることです。調味料として油、醋,甜缅酱豆豉桂花豆瓣芝麻牡蛎油鲜酱露,XO辣油があります。薬味としては、大蒜(ニンニク)(ねぎ)香菜(パクチー)辣椒(とうがらし)があります。これらを火鍋の付けダレとしてブレンドして食べます。

 

香辛料の一部も火鍋のスープの味付けに使用されています。代表的な香辛料には花椒(さんしょう)辣椒(タカの爪)桂皮(シナモン)八角(はっかく)(みかんの皮)甘草(カンゾウ)などがあります。その他として(なつめ)党参(トウジン)枸杞(クコノミ)生姜(ショウガ)、長(長ねぎ)などの薬膳を入れます。火鍋を言葉で敢えて表現するなら、全ての調味料、香辛料、薬味を組み合わせてハーモニーを醸し出し、コクのある奥深いうま味を出しています。火鍋が中国っ子を惹きつけて止まない所以です。(写真は呷哺呷哺で撮影の火鍋 左:色んな調味料、右:一人鍋<78>

中国語~ピンインをローマ字読みしない重要性

教室で“老が白板に書いたピンインを復唱して発音練習します。中国語は発音が正しくないと通じないことが多々あります。中国へ赴任時、请给我看看菜(cai4dan1)の単語が通じず苦労しました。その他、(tang1)(tang3)を間違ったなどの失敗もありました。中国語の発音はピンインを使って覚えますが、ピンインの発音を学会してこそ正しい中国語が話せます。以下は筆者が中国滞在中、気付いたことです。

 

ケース1:“啤酒(pi2jiu3)三重母音iouの発音

レストランで“来啤酒”ビールを下さい」と言います。赴任したての頃は“啤酒”のピンインはpi2jiu3”をローマ字読みして「ピー・ジュウ」と言っていました。でも务员啤酒と聞き直してきます。服务员の発音は、何度聞いても耳には「ピー・ジョウ」と聞こえるので、先生に質問したことがありました。

“酒”(jiu3)は子音と韻母iuで構成。iuの発音はiouが結合した三重母音の”iou”と発音し、oの発音を間に入れます。でもピンインは、iuの二文字で書きます。このiuは他に研究”(yan2jiu1) “要求(yao1qiu3)などもあり、これらもiouと発音します。ここで面白いのはiouとそのまま単独で使う時には、iyに変わってyouと書き、例えば”有“(you3)”又“(you4)の単語があります。

 

ケース2:“退房” (tui4fang2)▶ 三重母音ueiの発音

もう一例紹介しましょう。中国滞在中、ホテルをチェックアウトする時、退房(tui4fang2)と言います。“tuiをローマ字読みし「ツィファン」と言いましたが、服务员の発音は何度聞いても間に「ェ」が入っているように聞こえます。“退”tui4は子音tに韻母uiが付き、発音はueiが結合した三重母音”uei”です。発音はu+ei、やはり間にeの発音が入りますが、でも書く時はuiの二文字で書きます。

他にもui(hui2tou2) (you1hui4)などがありueiと発音します。ueiを単独で使う時には、uwに変わってweiとなり、”未来“(wei4lai2)”威力“(wei1li4)があります。

三重母音は、iao iou uai ueiの4種類があり、三重母音をきちんと話せるようになればネイティヴらしく聞こえます。

 

ケース3:“日本”(ri4ben3)▶ 短母音 ri zhi chi shiiの発音

筆者が中国へ赴任したての頃、“你从哪儿来了?”と聞かれ、“日本”(ri4ben3)と答えましたが通じずショックを受けました。“riiは、アルファベットのiで示されますが、実際の発音はiではありません。舌を反り上げてィを発音するこもり音です。その他 “知(zhi1)(chi1)十”shi2 などに使うi”も同様です。

 

ケース4:字”(han4zi4)▶ 短母音zi ci siiの発音◆◆◆

字“(han4zi4)典“(ci2dian3)”意思“(yi4si)などに使われているiも、実際の発音はiではありません。zi,ci,siをローマ字読みの「ジ、チ,シ」と発音しないことは教室で学習したと思います。z,c,siを一緒に用いて下の先を歯茎に付けて発音します。

 

笑い話を紹介しましょう。中国語を勉強して中国に初めて来た日本人が、中国人の名字には李さんや王さん、張さんが多いと聞いていたが、「ハンズ」さんが多いとは知らなかったと言いました。“你是什么名字?”(ming2zi?)と聞いたつもりが、“你是什么民族?”(min2zu2)と誤解され、相手から返って来た答えが全員族”(han4zu2)だったそうです()iuの発音を混同し、文法も間違っており“是”でなく“叫”を使うべきでした。

挨拶で良く用いられる“你好”(ni3hao3)iは、日本語の「ィ」に近いですが、口に指3本が入るぐらい両側に思い切り開けます。ここでもiを単独で使う時はyiと書く決まりがあります。

母音は日本語では5個ですが、中国語では何と10個*の母音があり、中国人は10個の母音を聞き分けています。母音を正しく発音しないと相手は分かりません。下記URLに分かり易く公開されていますので、詳しく学習されたい方はご訪問下さい。

 

*注釈:母語話者以外の普通話学習では母音は6個になります。

 

 

【参考資料】

「結之介の中国語講座-中国語発音-」(https://china.younosuke.com/01_03.html

中国長江流域~記録的な干ばつで甚大な被害

大阪でもようやく秋風が吹くようになってきました。中国の長江流域では、今年の夏は猛暑と水不足に見舞われ甚大な被害が出ています。“中央电子台”13chの報道によると、今年の梅雨は短く高温の日が続き、河南,山西,甘,山省では広域で大規模な干ばつが発生しました。例年、これらの地域は梅雨時の豪雨により各地で洪水、浸水などの被害が出ますが、今年は一転全く雨が降らない干ばつに襲われています。長江はチベット高原から上海市の東シナ海へ注ぎ、途中に山峡ダムを擁する全長6300kmの世界第3位の大河です。流域面積は何と180k㎡、分かり易く言えば正方形の一辺が1,340kmに相当する広大な面積になります(日本の国土の約5倍)。7月から長江流域の降水量は、地域に応じて40~80%減、平均50%減少しました。この影響で湖や川が干上がり、古代の仏像(重慶市)が現れたり、普段は湖の中にある寺院(江西省)を干上がった湖底を歩いて訪ねたりしています。

深刻な干ばつ地域は、河南省の平山、河北省の廊坊市,保定市,唐山市,西安市に集中しており、被害地域は国家面積の半分を占めます。長江流域の重慶市では気温が40℃を越える60年振りの記録的猛暑となり、大規模な山火事が数カ所で発生、街の高層ビル越しに赤々と燃えている山々がテレビ画面に映し出されました。1500人以上が避難する騒ぎになっています。

四川省では農作物の被害以外に、水力発電所の水位低下に伴い発電能力が制限されています。電力不足により工場操業停止が相次ぎ深刻な問題になっています。四川省は日系の自動車メーカー関連が多く進出していますが、操業停止を余儀なくされ、部品調達に支障が発生、車の納期遅延に影響していることは日本でも報道されています。省都の成都市ではネオンや街灯の消灯、地下鉄の照明の間引き、エスカレーターも停止されました。気温40℃を越える重慶市では多くの市民が涼を求めてクーラーの効いた地下鉄駅で過ごしています。中国では人が集まると直ぐにポーカーゲームが始まります。駅のあちこちで車座になって市民が楽しんでいます。市内では新型コロナウイルスがまだ蔓延していますが、やはり暑いので殆どの人がマスクを外しています。

 

筆者が滞在した保定市は河北新聞によると、40年振りに干ばつが発生しました。農地18695%が干ばつの被害を受け、5万人が飲料水不足、水不足で8000頭の家畜が死亡した模様です。畑のトウモロコシの背丈は例年2m以上に育ちますが、今年は1mにしか育たず実も小さく、落花生の実入りも悪く売り物になりません。インターネット上で「干ばつは太陽光発電のせいだ」と根拠のないデマを流布する者が出て来ました。公安当局はインターネット上の情報は真実と誤りの両方があり、盲目的に信用しないようにと注意を促しています。

(写真:825日放映のCCTV13ch 畑の作物が全滅)

香菜を使った夏に合う料理

中国では日本であまりお目に掛らない野菜が色々あります。その中でも印象に残る野菜は、パクチー」です。中国語では“香菜”(xiang1cai4)と言い原産国は地中海沿岸の国のようです。今では日本でもパクチーブームが起きているようですが、パクチーの特徴として香菜と言う名が示す通り、何と言ってもあの独特の香りです。あの香りで好き嫌いが分かれると思います。私が最初に食べた時は「ドクダミ草」のような香りで思わず顔が歪みました。別名「カメムシソウ」とも言うらしいです。それほど好きでもなかったのですが、今はあの臭いも気にならなくなりました。

日本では刻んだネギをラーメンに入れたり、みそ汁に入れたりします。中国でも香菜も火鍋などの薬味として使うことが一般的です。しゃぶしゃぶのタレとして、色んな香辛料をミックスしたゴマダレに刻んだパクチーをふんだんに盛り、羊肉を漬けて食べると最高に美味しいです。中国ホテルの朝食では、パクチー100%のサラダも出ます。

生では少し抵抗がある方には、“香菜炒蛋”(香菜の卵とじ炒め)を紹介しましょう。使う材料は、香菜、卵 、味付けとして塩、油、胡椒、調味料、みりんなどです。香菜をきれいに洗い根を残し、みじん切りにしておきます。 卵をほぐし、適量の塩、みりん胡椒、調味料を入れてよくかき混ぜます。細かく切った香菜と卵、少し水を加えてさらに混ぜます。 フライパンに適量の油を入れ、熱したら先ほどのかき混ぜた卵を入れて焼きます。ひっくり返しても焼き、卵が固まり状に固まってくれば出来上がりです。 卵に火が通ればすぐ火を止め、香菜は生を保つのがポイントです。決して長く炒めないでください。

もう一つ香菜を使った中国のサラダ“香菜拌牛肉”(香菜と牛肉のマリネ)を紹介しましょう。中国では夏に合う“凉菜”(前菜)として一般的な料理です。暑い時期に、スパイスの効いた牛肉と香菜の香りで口の中に爽快になり家族には好評と思います。まず牛肉を薄くスライスし、ワイン・オイスターソース・澱粉・食塩他で30分ぐらい漬け込みます。次に香菜の束をぶつ切り、刻んだニンニク・生姜・唐辛子もみじん切りにカットしておきます。鍋に十分に油を入れ、漬け込んだ牛肉を炒めます。火を止めてから先ほどカットしておいた材料他を入れて余熱でよく混ぜ合わせます。牛肉の旨さとピリッとした辛さ、そして香菜のアクセント感が効いて暑気払いにピッタリのマリネです。筆者は何度も食べても飽きることはありませんでした。簡単ですから皆さんも是非お試し下さい。

 

(写真左;香菜だけのサラダ、写真中;香菜炒蛋、写真右:香菜拌牛肉

中国の大学入試~作文問題

全国の“高考(大学入試)が先月、終わりました。西安大学の先生が今年の試験情況、公開された作文の問題を知らせてくれました。西安市は大学が多く、唐・隋の遺跡以外に大学の街として有名です。今年の高考は6月7日から8日の二日間に分けて実施され、西安市の受験生は323,058人、全市に13の試験区、79カ所の試験会場と2,206カ所の試験教室が設けられました。ネットで当地の報道を見ると、西安市教育局が今年から受験生1人ずつの連絡先台帳を作成し、何かあった時に連絡できるようにしたようです。今年も再びコロナ状況下での試験となり、29カ所の予備の会場、さらにコロナ感染の疑似対応者用の5カ所の隔離会場、さらには胸科医院の中に試験会場を設ける念の入れようです。

試験に関わる4万人のスタッフは、接種を済ませ2週間前には健康管理アプリへ登録しておかなければなりません。WeChatサイトからは、天気予報など入試に関わる色んな情報を流します。当地のテレビニュースでは、街にはたくさんの交通警官が出動し、試験会場前では交通規制を敷き、路地を走行する車を幹線道路へ追い出しています。警官は、「警笛鳴らすな!」のカードを持ち、その場。その時々の規制を行っています。例えば、交差点で大急ぎで試験会場に向かう学生を見掛ければ、すぐに車を止めて学生の通行を優先させます。パトカーを待機させ、学生が受験会場を間違っても、直ぐに指定の受験会場に送り届けます。駅前では「緑高考」のステッカーを貼った受験生優先のタクシーが待機し、受験生を会場まで送り届けます。試験会場周辺では、車の警笛を禁止、道路工事の停止、周辺の工場の操業停止など、静かな環境が確保できるように事前に政府の通達、巡回が行われるなど街全体に緊張感が漂っています。一部の受験会場では身分証や受験票を忘れた受験生が出ましたが、交通警察が受験会場の入場証明を発行します。会場の入口では、カンニング防止のため、金属探知機による物々しい身体チェックが行われ、道路では電波監視車が盗聴機器からの異常電波を監視するなどしています。

さて全国版作文問題のA巻とB巻の内、B巻の作文問題を紹介しましょう。あなたはどのように書きますか?

<試題問題>『二つのオリンピックが行われた街、輝く世界。二つのオリンピックは、中国のスポーツの新たな発展レベルと総合的国力の飛躍的な発展を示しました。あなたは幼い子供から能力がある青年への飛躍を目の当たりにしました。その経験から、あなたはスポーツの栄光と国家の強さを感じることができました。未来に進み、民族振興の春の潮流に溶け込むでしょう。卓越は終わりがなく飛躍も止まりません。下表記の材料を組み合わせて、“跨越,再跨越”(乗り越える、再び乗り越える)を主題として、あなたの気持ちや考えを体現しなさい。』

<作文への要求>小項目を選択し、意図を決め文体を明確にし、自分で表題を決めなさい。他人の論文を模倣しないこと。他人の作文をカンニングしないこと。個人情報を開示しないこと。800語以上。

 

<试题>

双奥之城,闪耀世界。两次奥运会,都显示了中国体育发展的新高度,展示了中国综合国力的跨越式发展,也见证了你从懵懂儿童向为青年的跨越。亲历其中,你能感受到体育的荣耀和国家的强盛;未来前行,你将融入民族复兴的澎湃春潮。卓越永无止境,跨越永不停歇。

 

*阅读下面的材料,根据要求写作。(60分)

調理用の火~石炭から天然ガスへ

中国料理は火の料理と言われています。20156月、ウイグル地区の遺跡から3500年前に調理に使用したとみられる石炭の塊を発見、太古の時代から強い火力で調理していたことが明らかになりました。中国の地方を旅すると道端でドラム缶を半分に切ったかまどに石炭をくべ、送風機でゴォ-と音出しながら空気を送り込み、石炭を真っ赤にして調理している光景をよく見掛けます。そこに大きな中華鍋を掛け少量の油を引くと立ち昇った油煙に、ポッと火が着きビックリします。石炭のように火力が強くないとこのように火は着きません。その熱した鍋に肉を入れ野菜を放り込み炒めます。中国料理には強い火力が必要、石炭は料理の火力として不可欠でした。でも近年、保定では大気汚染が深刻になり、石炭を燃やして調理することが禁止されました。

西安の街を歩くと長いバーベキューコンロに炭を入れ、モウモウと上がる煙を上部に付けた扇風機が空へ吹き飛ばしています。コンロでは羊肉を串に刺し、各種の香辛料を振り掛けて焼いています。この焼肉を「シシカバブ」と言います。日本で味わえない焼肉、エキゾチックな味でとても美味しいです。このシシカバブの発生する煙が大気汚染の原因とされ、西安市街ではバーベキュー禁止、屋内の集煙器付の炉で焼かなければならなくなりました。屋外で調理する光景は、見ていて楽しかったのですが、寂しい限りです。

保定市の大気汚染は中国ワースト1です。日本基準ではpm2.570を超えると不要不急の外出を減らすように注意報が出ます。保定市では筆者が滞在中、pm2.5734も出た日もありました。なんと日本の10倍です。Pm2.5対策として市内へのトラックの進入禁止、通行できる車はナンバーの奇数と偶数の入替え制となりました。田舎町らしい規制として、農業用発動機を積んだ三輪自動車の運行禁止がありました。ポンポンと白い煙を吐くので規制の対象とされました。企業としては何とか物を出荷しないといけないので焦ります。そこでロバ車の復活です。ロバに大八車を引っ張らせ運搬しようとしますが、ロバはなかなか気分屋の頑固者で、素直に言うことを聞きません。

大気汚染の原因となる多数の工場は操業停止の厳命を受け、北京では人民代表大会や冬季オリンピックの時は、抜けるような青空が広がり政府の面目躍如となりました。

このように厳しい規制が出されても、皆が逆らうことなく黙って従うのでいつも不思議に思っています。道路では車のクラクションの騒音でとても煩かったですが、クラクション禁止の通達が出ると翌朝から嘘のように静かになりました。路上喫煙禁止令が出ると皆が黙って従います。無く子も黙るお上の指示には、逆らえないと言ったところでしょうか。

家庭で調理する時は石炭を使用していましたが、天然ガスへの切り替えが急ピッチで進んでいます。保定近郊の農村では、2020年にはほぼ全戸の切り替えが終わりました。写真の黄色い配管が天然ガスを送るために急遽敷設されたガス配管です。中国料理は火力を必要としますので、より火力の強いプロパンガスを用いる老舗店も少なくありません。

中国料理の鍋は底が丸い形状をしています。火が鍋を取り囲み熱源を余すことなく利用できるようにするためです。底部が丸いのでヘラを用いて料理の取り出しにも便利、この鍋一つで色んな中国料理を作ります。元々、鍋はかまどに固定されていたもので、田舎へ行くとかまどに固定された中華鍋を見ることができます。固定された鍋では火加減の調整ができず、強火で一気に仕上げてしまう中国調理法が発達しました。

 

(写真左:道端で石炭で調理中、写真中: 保定農村での天然ガスの黄色管、写真右: かまどに固定された中華鍋)

桂林の旅~象鼻山と派手な色彩の鍾乳洞

桂林は“漓江”li2jiang1下り以外に“象鼻山(xiang4bi2shan1)が有名です。象が鼻を伸ばして水を飲んでいるような姿から名付けられたようです。この洞穴は古代の地下水の河道が浸食に伴い、地上に現れたもので、既に唐時代に観光地化され1200年の歴史があります。この洞穴を”水月洞“と言い、ここを通して川面に浮かぶ満月を眺める風景山水月がひときわ美しいと言われます。この山の中腹に水月洞より古い“象眼岩”と言うもう1本の地下水路が残っています。観光地化されておらず登る人もいません。試しに登りましたが出口がちょうど崖の中腹に出て、道が途切れて進むことができずに引き返しました。最初に桂林を訪れた際、この川に竹筏を浮かべて鵜と一人の漁師が佇んでいました。これは絵になると思い、シャッターを押そうとしたところ「お金取られるよ!」と言われビックリしたことを思い出しました。

次に阳朔西街から“高田风楼村”に向かい、途中昼食のためレストランに立ち寄りました。食事を終えてふと山を見ると山腹に巨大な穴が開いた山がありました。その穴が丸く月のように見えることから“月亮山”と呼ばれています。この景色が見られる所に、農家のようなレストランが集まって農家料理を提供していました。

桂林のようなカルスト台地に必ず存在するのが鍾乳洞です。鍾乳洞は浸食により地下に空洞や川が流れており、その最も大きなものが“芦笛岩です。外国の要人が必ず立ち寄るほど有名な鍾乳洞です。高い天井から鍾乳石が垂れ下がったり、地上から石筍や石柱がそびえ立っていたり、宮殿のような大広間、地下にできた池が波一つ立てずにまるで鏡のように周囲の景色を映しています。洞窟は赤・青・黄の光で綺麗にライトアップされ中国らしいです。でも少々ド派手すぎて天然の岩の色が分からずやり過ぎではと思いました。

さて最後の訪問先“世外桃园をご紹介しましょう。この園も阳朔西街の近くにあり、桂林の美しい景色を背景に造りだした桃源郷の世界、少数民族チワン族の生活様式も合わせて紹介しているテーマパークです。“世外”はこの世の外と言う意味で“桃园”は桃源郷を指します。園内はとても広く運河のような川に沿って、ボートに乗り周遊します。途中には小山のトンネルの中を抜け、川辺には花が咲き、カモが泳ぎ、所々にショーを行う小屋が建てられ、少数民族衣装を着た人たちが歌や踊りなどを披露、桃源郷を人工的に造っています。ボートを降りると少数民族の文化に触れられる鼓楼群を参観できます。

今回は時間が無く足を延ばせませんでしたが、もし桂林へ来られるなら、レンタサイクルで“阳朔”(yang2shuo4)を起点に“高田乡”(gao1tian2xiang1)まで足を延ばし、田園の中にそびえるとんがり山の麓を抜け、桂林らしい風景の中、竹筏で川遊び人工的な美よりも大自然の雄大さを身体で感じる旅を是非お薦めします。

 

(写真上左: 象鼻山、上中:月亮山、上右・下左: 芦笛岩、下中: 世外桃园のボート乗り場、下右:踊りの出演者)

桂林の旅~想像を超える野外ショー

漓江下りを終え“阳朔西街”へ着くと至るところに“啤酒と言う看板が目に飛び込んできます。啤酒とは阳朔地方の名物料理、漓江のきれいな水で育てた“草鱼”をぶつ切りにし、高温の油で表面がサクサク、中身がフワフワになるように揚げ、鍋に入れビールを掛け唐辛子、トマト、葱、生姜、ニンニク、香辛料と共に煮込みます。魚のから揚げビール煮込み料理です。川魚の臭みもなく、皮はパリっとして魚には適度に味が染み込み、程良い辛さと相まってとても美味しかったです。

食事の後、いよいよ桂林山水を舞台背景にした壮大な屋外ステージ中国漓江山水剧场へ観劇に行きました。屋外ステージは座席数が2200席有り、周りを12の高い山が囲み、暗くなると遠方の山に強力ライトを当て白く浮かび上がらせます。目の前の広大な水面が舞台になっており、人が下から上に出て来たり、水面を歩いたり、あるいは船や筏が行き来したり、複雑な仕掛けがあるようです。目の前で演技していると思えば、遥か向こうの100m200m先の丘の上で団体演技をしていたり、想像を超えるスケールの屋外劇場です。夜6時を過ぎると続々と観客が押し寄せ、瞬く間に2200人分の席が埋まりました。

始まりと同時に山々がライトアップされ、闇夜の黒と照らされた山の白のコントラストがスケールの大きな水墨画の光景になり、最高の舞台背景です。写真のように山は白色、空と川は黒色となって、その中をオレンジや赤の役者が浮き上がって見えます。山に強い照明を当てれば白色になると着眼した人は立派です。

 

 

この素晴らしい演出を手掛けたのは北京オリンピック開会式をプロデュースした“张艺谋”映画監督です。構想に55カ月、舞台製作に3年延べ85カ月の時間を要しました。演じられるショーは“印象刘三姐”と一風変わった名が付けられています。1961年に“刘三姐”と言う映画が上映されました。刘三姐とは刘家の三女の意味、広西省のチワン族で伝説とされた人物で、人間における誠実・善良・美しさをテーマにした歌で人間の素朴性を追求した映画で人気を博しました。刘三姐をショーの名前に付け“印象”の冠名を付け、少数民族チワン族の生活、民族習慣を芸術的に表現したものです。総勢600名にも及ぶ役者は地元の漁師、少数民族です。赤青黄色の綺麗な民族衣装を着て漁師の恰好に扮し、漓江の自然風景、漁民の生活、少数民族の習慣を芸術的振り付けと演出効果を高めたものです。演技時間は約70分、多勢の漁師が竹筏に乗って行き交うシーン、漓江の漁火風景、長さが100m以上はあろうかと思われる紅色の何十本もの幟(のぼり)を多くの人が動かし波の表現シーン、延々と続く無数の松明を持った人の行進、水牛が川辺を散歩し傍で娘さんが野菜を洗っているシーンなどがありました。かつて黒沢明監督が素晴らしい映像美を演出しました。同じように自然や事物から受ける反応に対する視覚効果を高め、このショーの名前に“印象”が付く通り、強烈な感銘を受けるように演出したものです。一見の価値はありますので桂林旅行の際には、是非オプショナルツアーに加えて下さい。